7月19日、立命館大学にて「京せんす作りに挑戦」が開催されました!立命館のアイコン的存在である、時計塔が立つ存心館の教室で行われました。朝からじっとりと汗をかくような日に、15人の小学生、6人の中学生に参加が見られました。教室に入るとずらっと並ぶせんすと、国内屈指のせんす職人さんたちに迎えられ、心が弾みます。
〇様々な場面で活躍する「京せんす」
「せんす」と一口に言っても、多種多様な姿があります。平安時代に生まれたヒノキの木で作られる檜扇(ひおうぎ)が原型となり、様々な変化を遂げました。せんすが庶民の前に現れるようになったのは室町時代になってからで、それまでは身分の高い人の手元にのみあったのです。
西洋に渡ると、骨組みが象牙など他の素材を使い、地紙に布を使うなど、様々な変化を遂げたのです。そして教室に並ぶせんすには、日本の伝統的な職業や催事で使われるもので、それぞれ個性が目立ちます。
最もせんすを使う職業は、舞妓さんや、芸子さんです。一部に金属が入っている舞扇(まいおうぎ)を使用します。能楽師や歌舞伎役者が舞台で使用するもの、お坊さんや神職などが手に持つものも決まっています。「中啓」と呼ばれ、閉じたときに上部が開いた形をしているものもあります。
お茶の場で使われるもの、冠婚葬祭で使われるもの、七五三や成人式などの晴れの場で使われるものもそれぞれ大きさや素材が違い、どれも目を引くものばかりです。お雛様が顔を覆うように持つものは、豪華な飾り紐がついていますね。
せんすが「仰ぐため」だけではなく舞台や晴れの場を彩り、身分や職業を示す役割を持つ、重要な存在であることが分かります。
〇職人さんによる実演
「京うちわ」が二枚の地紙で竹骨を挟むように貼っていくのに対して、「京せんす」は三枚の地紙を張り付け、羽原に折りたたんでから骨組みを差し込んでいきます。美しいせんすを作りあげる重要な作業は「地紙」「折り」「附け」という3つのおおきな工程に分けられます。
実際は長い時間をかけて仕上げていく職人技ですが、今回のために全ての工程を実践して解説してくださいました!職人さんお手製の職人道具には、長年の知恵と経験がしみ込んでいます。
まずは地紙を作る工程です。紙同士を合わせ「裁ち」という工程で長さを整えたところで、「折り」の作業に入ります。瞬きをしている暇もなく、美しい蛇腹が出来上がっていきます。
そして「附け」の工程では、地紙の間に竹骨を刺し完成まで仕上げていきます。「地吹」と言う工程で地紙の間に息を吹きかけ、糊を付けた竹骨を隙間に一本ずつ入れていきます。繊細な作業を素早く行う職人技に、目が離せません。
糊が乾燥したら、「先ツミ」をして長さを整え、「親当て」をして親骨を内側に沿わせます。この「親当て」の作業は、紙で作る京せんすならではの工程で、上部の広がる地紙をしっかりと支えます。
流れを理解したところで、「附け」の工程から、皆さんの手で実行します!
〇自らの手で「附け」
18本の竹骨のうち、16本は「中骨」で、外側の太い2本が「親骨」と呼ばれます。中骨を通す空間を作るための「地吹」は見た目よりも強い息が必要です。
充分な空間が出来たら中骨入れ込んでいきますが、数の多い中骨を一つもズレずに入れ込むのは至難の業です。焦らず、確実に進め、コツをつかんでいきます。
糊をつけてもらい、うまく「中入れ」の作業が出来たら、乾燥するまで待ちます。
乾いたら、親骨を温めて変形させ「親当て」をしていきます。重要な仕上げの作業なので、協力し合いました。
〇完成です!
沢山の工程を乗り越えて、マイ京せんすの完成です!京都が誇る京せんすの職人技を目の当たりにし、自分の手で完成させる経験は、唯一無二です。
小学3年生の参加者にお話を聞くと、7月19日は夏休み最初の日で、楽しい休暇の最初の思い出になったと教えてくれました。立命館大学の広さに驚き、大学生活に興味津々でした。
「京うちわを作ろう!」で作成したうちわは、1つしかない大切な作品として、お家で飾っているそうです。うちわやせんすは、仰いで涼しくなるためにも、お部屋を彩る役目としても大活躍しますね。
この経験が皆さんの夏の思い出の1つとして輝くことを、願っています。
ありがとうございました!
記事作成・写真提供:立命館大学・文学部・4回生
田代恵理